相続税の申告後、税務署から「相続税の税務調査を行いたい」と連絡が来ることがあります。
相続税の税務調査と聞くと、
「申告に漏れがあったのではないか」
「名義預金を指摘されるのではないか」
「家族名義の通帳も見られるのか」
「過去の贈与について聞かれるのか」
「追加で税金がかかるのではないか」
と不安に感じる方も多いと思います。
相続税の税務調査では、単に亡くなられた方名義の預金や不動産だけでなく、ご家族名義の預金、生前贈与、現金の保管状況、生命保険、過去の資金移動なども確認されることがあります。
この記事では、春日井市周辺で相続税の税務調査の連絡が来た方に向けて、最初に確認すべきこと、準備すべき資料、注意すべきポイントを税理士の立場から解説します。
1. まずは税務署からの連絡内容を正確に確認する
相続税の税務調査の連絡が来た場合、まずは慌てずに、次の内容を確認してください。
- どこの税務署からの連絡か
- 担当者の部署名・氏名
- 調査対象となる被相続人の氏名
- 調査対象となる相続開始日
- 調査予定日
- 調査場所
- 当日同席が必要な相続人
- 準備を求められている資料
国税庁の税務調査手続FAQでは、実地調査を行う場合、原則として調査日時・場所・目的・対象税目・対象期間などが事前に通知されるとされています。
電話を受けたときに、その場で細かい内容まで答える必要はありません。
たとえば、次のように伝えるとよいです。
詳細は資料を確認したうえで回答いたします。
相続税の税務調査では、記憶だけで回答すると、後から通帳や資料と食い違うことがあります。
まずは連絡内容を正確にメモし、税理士へ相談することが大切です。
2. 相続税の税務調査は「名義預金」が特に見られやすい
相続税の税務調査で特に問題になりやすいのが、名義預金です。
名義預金とは、通帳の名義は配偶者、子、孫などになっていても、実質的には亡くなられた方の財産と判断される預金のことです。
たとえば、次のようなケースでは注意が必要です。
- 専業主婦の配偶者名義に多額の預金がある
- 子や孫の名義の通帳を亡くなられた方が管理していた
- 亡くなられた方の収入から家族名義の口座に積み立てていた
- 通帳や印鑑を亡くなられた方が保管していた
- 家族名義の口座だが、本人が自由に使っていなかった
- 生前贈与契約書がなく、贈与の事実を説明しにくい
国税庁が公表している令和6事務年度の相続税調査資料でも、相続税の実地調査件数は9,512件、追徴税額合計は824億円とされており、実地調査・追徴税額ともに前事務年度より増加しています。
また、国税庁の公表資料では、相続人や家族名義口座への預金移動が問題となる事例も示されています。
相続税の調査では、単に「誰の名義か」だけでなく、誰のお金か、誰が管理していたか、誰が自由に使えたかという実態が確認されます。
3. 相続税の税務調査で確認されやすいポイント
相続税の税務調査では、次のような点が確認されやすいです。
亡くなられた方名義の預貯金
まず確認されるのは、亡くなられた方名義の預貯金です。
- 相続開始日時点の残高
- 定期預金の有無
- 普通預金の入出金
- 相続開始前の大きな出金
- 他の金融機関に口座がないか
- ネット銀行や証券口座の有無
特に、相続開始前に大きな出金がある場合は、その使い道を確認されることがあります。
たとえば、
- 入院費や施設費に使った
- 葬儀費用として準備した
- 家族へ渡した
- 自宅で現金保管していた
- 使途が分からない
など、出金後の流れを説明できるようにしておく必要があります。
家族名義の預金・証券口座
相続税の調査では、配偶者、子、孫など、家族名義の預金や証券口座について確認されることがあります。
特に注意が必要なのは、次のような場合です。
- 収入に比べて預金残高が多い
- 亡くなられた方から継続的に入金がある
- 家族本人が通帳の存在を知らなかった
- 通帳・印鑑・キャッシュカードを亡くなられた方が管理していた
- 贈与税申告をしていない
- 贈与契約書がない
家族名義であっても、実質的に亡くなられた方の財産と判断されると、相続財産に加算される可能性があります。
生前贈与
生前贈与についても、相続税の調査で確認されやすい項目です。
- 毎年110万円以内で贈与していた
- 贈与契約書を作っていない
- 贈与を受けた本人が管理していない
- 贈与税申告をしていない
- 相続開始前の贈与がある
- 住宅取得資金や教育資金の贈与がある
特に、単に口座へ資金を移していただけでは、贈与として認められない場合があります。
贈与として説明するには、
- 贈与する人の意思
- 贈与を受ける人の意思
- 贈与契約書
- 資金移動の記録
- 贈与を受けた人による管理・使用実態
- 必要に応じた贈与税申告
などを整理しておくことが重要です。
手元現金・金庫内の現金
相続税の調査では、現金の保管状況も確認されることがあります。
- 自宅金庫に現金がなかったか
- 相続開始前に多額の現金出金がないか
- 葬儀費用として引き出した現金の残額
- 家族が預かっていた現金がないか
- 貸金庫の利用がないか
相続開始前の出金について、使途が説明できない場合、手元現金や家族への移転として確認されることがあります。
生命保険金
生命保険金も相続税の調査で確認されやすい項目です。
- 死亡保険金の受取人
- 契約者、被保険者、保険料負担者
- 保険料を誰が支払っていたか
- 申告に含めているか
- 非課税枠の適用が正しいか
生命保険は、契約形態によって相続税・所得税・贈与税の取扱いが変わることがあります。
保険金の入金資料だけでなく、保険証券や契約内容のお知らせも確認しておく必要があります。
不動産・土地評価
不動産がある場合、土地評価も確認されることがあります。
- 路線価評価が適切か
- 土地の形状、間口、奥行、接道状況
- 貸地、借地、貸家建付地の評価
- 小規模宅地等の特例の適用
- 利用状況と評価方法の整合性
- 固定資産税評価証明書との関係
土地評価は専門的な判断が必要になるため、税務署から指摘があった場合は、評価根拠を整理して説明できる状態にしておくことが重要です。
4. 税務署から連絡が来た段階で準備すべき資料
相続税の税務調査の連絡が来たら、まず次の資料を整理しましょう。
相続税申告関係
- 相続税申告書一式
- 財産評価明細書
- 遺産分割協議書
- 相続人関係図
- 戸籍関係資料
預貯金・金融資産関係
- 亡くなられた方名義の通帳
- 過去の通帳履歴
- 定期預金明細
- 証券会社の取引報告書
- 残高証明書
- 家族名義口座への資金移動が分かる資料
- 大きな出金の使途が分かる資料
贈与・資金移動関係
- 贈与契約書
- 贈与税申告書
- 振込記録
- 家族間の資金移動メモ
- 住宅取得資金贈与、教育資金贈与などの資料
不動産関係
- 固定資産税課税明細書
- 登記事項証明書
- 公図
- 地積測量図
- 賃貸借契約書
- 路線価評価の資料
- 小規模宅地等の特例に関する資料
保険・その他財産
- 生命保険金支払通知書
- 保険証券
- 解約返戻金資料
- 車両、貴金属、骨董品などの資料
- 貸付金、未収金、債務に関する資料
- 葬儀費用の領収書
すべてを一度に完璧にそろえる必要はありませんが、税務署から求められている資料、申告時に使った資料、相続開始前後の資金移動が分かる資料は優先的に整理することをおすすめします。
5. 当日に不用意な回答をしない
相続税の税務調査では、調査官から次のような質問を受けることがあります。
- 亡くなられた方の収入や生活状況
- 預金の管理者
- 通帳や印鑑の保管場所
- 相続開始前の出金の使い道
- 家族名義預金の原資
- 生前贈与の有無
- 自宅金庫や貸金庫の有無
- 相続人間で把握していた財産の内容
このとき、記憶があいまいなまま答えてしまうと、後から資料と矛盾する可能性があります。
分からないことは、次のように回答して問題ありません。
現時点では記憶があいまいですので、資料を確認して回答します。
通帳履歴を確認したうえで説明します。
他の相続人にも確認してから回答します。大切なのは、事実と異なる説明をしないことです。
6. 税務調査で修正申告が必要になる場合
税務調査の結果、申告漏れや評価誤りがあると判断された場合、修正申告が必要になることがあります。
修正申告になる可能性がある主なケースは、次のとおりです。
- 名義預金が相続財産と判断された
- 生前贈与ではなく相続財産と判断された
- 相続開始前の出金の使途が説明できない
- 生命保険金の申告漏れがあった
- 証券口座やネット銀行の申告漏れがあった
- 土地評価が過少だった
- 小規模宅地等の特例の適用に誤りがあった
- 債務控除や葬式費用の計上に誤りがあった
修正申告となる場合、本税のほかに、過少申告加算税、延滞税、内容によっては重加算税が問題になることがあります。
ただし、税務署から指摘を受けたからといって、すべてをそのまま受け入れる必要はありません。
- 指摘内容は事実に合っているか
- 資料で説明できる余地はないか
- 贈与や財産管理の実態をどう整理するか
- 評価方法に合理性があるか
- 修正申告すべき内容か
これらを確認したうえで対応することが大切です。
7. 相続税の税務調査は税理士立会いをおすすめします
相続税の税務調査は、亡くなられた方の過去の財産管理や家族間の資金移動が問題になりやすい調査です。
特に、次のような場合は、税理士の立会いをおすすめします。
- 名義預金を指摘されそうで不安
- 家族名義の預金が多い
- 相続開始前に大きな出金がある
- 生前贈与をしていた
- 贈与契約書がない
- 土地評価に不安がある
- 小規模宅地等の特例を使っている
- 相続人間で財産の把握状況に差がある
- 申告を自分で行った
- 申告を依頼した税理士に調査対応を頼みにくい
税理士が立ち会うことで、調査官からの質問内容を整理し、必要な資料や税法上の考え方に基づいて対応しやすくなります。
8. 春日井市周辺で相続税の税務調査に不安がある方へ
各務税理士事務所では、春日井市・高蔵寺を中心に、小牧市、瀬戸市、尾張旭市、名古屋市守山区、長久手市、多治見市周辺の相続税申告・相続税の税務調査対応を行っております。
相続税の税務調査では、事前準備が非常に重要です。
税務署から連絡が来た後に慌てて対応するのではなく、早い段階で、
- 申告書の内容
- 預貯金の動き
- 家族名義預金
- 生前贈与
- 不動産評価
- 生命保険
- 相続開始前後の資金移動
を整理することで、落ち着いて調査に対応しやすくなります。
まとめ
相続税の税務調査の連絡が来た場合、最初にすべきことは次の5つです。
- 税務署からの連絡内容を正確に確認する
- 申告書・通帳・財産評価資料を整理する
- 名義預金・生前贈与・相続開始前の出金を確認する
- 記憶だけで不用意に回答しない
- 早めに相続税の税務調査に対応できる税理士へ相談する
相続税の税務調査は、事前準備によって対応のしやすさが大きく変わります。
春日井市周辺で相続税の税務調査に不安がある方は、早めに税理士へご相談ください。