相続時精算課税の手続きは「申告書の出し方」で結果が変わることがあります
相続時精算課税制度は、贈与時点でいったん贈与税を計算し、最終的に相続時にその金額を精算する制度です。
上手に使えば大きな節税効果を得られる一方で、申告手続きに不備(瑕疵)があると制度が適用されないという重大なリスクもあります。
たとえば、次のようなケースが実際に問題になります。
【例】
父から子へ令和6年中に1,000万円を贈与し、相続時精算課税の適用を受けるつもりであったが、贈与税の申告書に「相続時精算課税選択届出書」を添付し忘れた。
このような場合、税務上は「暦年課税」として扱われ、基礎控除110万円を超える部分に贈与税が課税されてしまうことになります。
後から「精算課税を選択したつもりだった」と主張しても、原則として遡っての訂正は認められません。
また、申告期限(贈与の翌年3月15日)を過ぎて提出した場合も、制度の適用を受けられません。
つまり、相続時精算課税は“選択の届出と期限”がそろって初めて成立する制度なのです。
このような手続上の不備は、税額そのものよりも「制度が無効になる」点に大きな影響があります。
特に将来的に相続税との通算を前提にしている場合、思わぬ税負担につながることがあります。
贈与を行う際は、意図した制度が確実に適用されるよう、申告書の添付書類・期限・記載内容を丁寧に確認することが大切です。