この度、厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会において、金融所得(株式や債券などの譲渡、配当、利子所得)を社会保険における保険料および医療の窓口負担に反映させる方針が示されました。
これは、社会保障制度における「応能負担の徹底」を目指す重要な改革であり、弊所のお客様の資産運用や税務戦略に大きな影響を与える可能性があります。
1.改革の骨子:法定調書の活用
厚生労働省は、応能負担を徹底するため、特に後期高齢者に対しても金融所得を勘案する方針です。
この実現のために提示されたのが、税制で用いられる法定調書を活用する案です。
法定調書を利用することで、これまで捕捉が難しかった金融所得の状況を正確に把握し、保険料や窓口負担の算定に組み込むことが可能となります。
ただし、この案を実現するためには、以下の整備が不可欠とされています。
• 法定調書のオンライン提出義務化。
• 法定調書へのマイナンバーの付番と正確性の確保。
• 大規模なシステムの整備。
これらの実現に向けたコストとスケジュールの検討が、急ピッチで進められる予定です。
2.なぜこの改革が必要なのか
この案の背景には、医療費の膨張と社会保険料負担の増加があり、特に高齢世代の医療費負担割合(75歳以上は原則1割または2割負担)に対する現役世代との世代間不公平を訴える声の高まりがあります。
現行制度の課題: 現在、上場株式の配当所得などは、確定申告を行うかどうかを本人が選択できるため、源泉徴収で課税関係が終了する場合、多額の金融所得を得ていても、保険料や窓口負担には反映されないという現実がありました。
この改革は、これらの所得を「可視化」し、「応能負担の徹底」を達成しようとするものです。
3.今後の影響と留意点
厚労省のデータによれば、高齢者(60歳代以上)の一人当たり上場株式保有額が明らかに多いという実態も、今回の金融所得勘案を後押ししています(例:70歳代の保有額は1,603万円)。
現時点では、この議論が高齢者のみを対象としているわけではなく、国民健康保険制度と被用者保険(賃金ベースで賦課)とのバランスについても論点として示されており、将来的には全世代を対象とする可能性も示唆されています。