医療関連

2026年度(令和8年度)診療報酬改定の基本方針と医療機関が注視すべき5つの重点領域

    2026年度(令和8年度)診療報酬改定に向けて、医療機関の皆様が経営戦略を立てる上で不可欠な、政府の検討方向性及び緊急対応策の要点をまとめました。

    今回の改定は、物価・賃金高騰への対応と、2040年を見据えた地域医療提供体制の構造改革が主要なテーマとなります。

    1.【緊急経済対策】人件費・物件費高騰への対応と賃上げ支援

    日本経済が新たなステージに移行し、物価や賃金が上昇する中で、医療提供体制の維持が喫緊の課題となっています。これに対応するため、令和7年度補正予算として「医療・介護支援パッケージ」が講じられています。

    主なポイント

    物価・賃金高騰への対応:医療機関や薬局が直面する人件費、医療材料費、光熱水費などの物件費の高騰を踏まえた対応が実施されます。

    賃上げ支援の実施:医療従事者の処遇改善や、業務改善(ICT/AIの活用による効率化)を通じた人材確保に向けた取り組みが求められています。

    具体の支援額(例):診療所(有床/医科無床/歯科)や薬局に対して、賃金分および物価分を合計した支援額が設定されています(例:医科無床診療所の場合、賃金分15.0万円、物価分17.0万円、合計32.0万円)。

    これらの支援は、地域に必要な医療提供体制を確保することを目的としており、経営の持続可能性を高めるための重要な措置となります。

    2.【構造改革】「かかりつけ医機能」の評価と機能分化の推進

    2040年頃を見据えた医療提供体制の構築に向け、「かかりつけ医機能」(歯科医、薬剤師含む)の評価と、外来医療の機能分化が改定の柱となっています。

    注目すべき制度

    かかりつけ医機能報告制度:医療法改正により、すべての病院、診療所、歯科医療機関、薬局は、自院が提供する「かかりつけ医機能」(日常的な診療提供、時間外対応、在宅医療、介護連携など)の内容を、行政および国民・患者に報告・公表することが求められます。

    機能強化加算(初診時):既に存在する「機能強化加算」(80点)は、より的確で質の高い診療機能、およびデータ提出を行う体制を評価する観点から、その評価のあり方が議論されています。

    外来機能の分化:特定機能病院や地域医療支援病院などの大病院は、専門的な診療に重点を置き、プライマリケア機能を担う患者については地域のかかりつけ医への「逆紹介」が強く求められています。今後は、大病院の専門医と地域のかかりつけ医が共同で治療管理を行う「連携強化診療情報提供料」(150点)の要件簡素化も論点となっています。

    3.【疾病管理】生活習慣病管理の強化とアウトカム評価への移行

    生活習慣病(糖尿病、高血圧症、脂質異常症)の重症化予防と質の高い診療を確保するため、管理料の評価軸が多職種連携とアウトカム(診療の質)重視へと移行します。

    経営に直結する変更点

    管理料の要件見直し:生活習慣病管理料(I)や(II)の算定にあたり、医師、看護師、管理栄養士等との多職種連携による総合的な治療管理を行うことが望ましいとされています。

    重症化予防の推進:特に糖尿病患者について、眼科受診勧奨に関する要件の追加および療養計画書に歯科受診の状況の記載欄を追加し重症化予防を徹底する方向性が示されています。

    データ提出の評価:生活習慣病管理料を算定する医療機関に対し、診療実績データを厚生労働省に継続的に提出する「外来データ提出加算」(50点/月1回)が設けられています。今後は、このデータ提出を通じて、HbA1C検査実施割合など、診療の質の指標(アウトカム)に基づく評価が推進されます,。

    4.【財源確保】長期収載品(先発品)の保険給付見直しと患者負担増

    医療保険財政の安定性と創薬イノベーション推進のため、「後発医薬品(ジェネリック)」の使用促進がさらに強化されます。その手段として、長期収載品(先発品)を患者が希望して使用した場合の「選定療養」の活用が拡大されます。

    経営・患者指導に関わる論点

    選定療養の更なる活用:後発医薬品が上市された長期収載品について、患者が先発品の処方を希望・調剤した場合、後発品との価格差の一部が保険給付外(選定療養)となり、患者負担となります。

    患者負担水準の引き上げ検討:現在、患者負担は価格差の4分の1相当ですが、これを2分の1、4分の3、または価格差の全額(1分の1)に引き上げる案が論点として挙がっています,。

    安定供給への配慮:後発医薬品の供給不足が続いている現状を踏まえ、患者負担の引き上げは、後発品の安定供給に向けた取り組みと並行して慎重に進められるべきとの意見があります。医療機関様においては、長期収載品を選択する患者様への説明と、ジェネリックへの切り替え推進が、より一層重要となります。

    5.【技術革新】医療DXとオンライン診療の適切な推進

    業務効率化と質の高い医療提供を両立させるため、医療DX(デジタル変革)や遠隔医療の推進が重要視されています。

    推進されるデジタル連携と遠隔医療

    全国医療情報プラットフォーム:国が進める「全国医療情報プラットフォーム」を活用し、地域の医療機関や多職種(介護サービス事業者等を含む)が連携するための情報共有基盤の整備が推進されます。

    遠隔医療の評価:専門性の高い医療を地理的制約を超えて提供するため、医師同士の連携(D to D型)や、患者が他の医療従事者(看護師等)とともに専門医の診療を受ける形態(D to P with D型)の評価のあり方が検討されています。

        :難病やてんかん患者の診断・治療方針決定、在宅医療における専門医(皮膚科、眼科等)の診療支援。

    オンライン診療の適正化:オンライン診療の適切な実施のため、急変時に速やかに直接の対面診療を行える体制を医療機関が整えること、また、「必ず医薬品を受け取れる」といった誇大広告の是正が引き続き求められています。

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